第80回日本自律神経学会総会
会長 大林 光念
(熊本大学大学院生命科学研究部生理機能検査学講座 教授)
第80回日本自律神経学会総会を、2027年10月15日 (金)・16日 (土) の両日、熊本県民交流館パレアにて開催いたします。歴史ある本学会の節目となる総会をお世話させていただくことを、大変光栄に存じます。学会の歩みを築いてこられた先達、そして日々の研究と診療を通じてその歴史を紡いでおられる皆様に、心より敬意と感謝を申し上げます。
今回のテーマは「AI時代の自律神経学」です。自律神経学は、生命が自らを保ち、環境の変化に応じてしなやかに適応する仕組みを探究する学問です。その複雑さに向き合う私たちにとって、AIはどのような可能性を開くのでしょうか。多様な生体情報から新たな関係を見いだし、基礎と臨床をつなぐ手掛かりを得ることへの期待は膨らみます。一方で、数値の背後にある患者さんの暮らしや、一人ひとりの訴えを見失わない姿勢は、これまで以上に大切になると考えます。
「温故知新」と申します。第80回という節目は、過去を振り返る到達点であると同時に、次の時代への出発点でもあります。先達が培ってこられた丁寧な観察、実験、臨床の知恵を土台として、AIという新しい道具をどう生かすか。問われるのは、AIに何ができるかだけではなく、私たちが何を問い、何を確かめたいのかということです。答えを得る速さに目を奪われず、問いを深める豊かさを大切にしたいと思います。AIを頼もしい伴走者としながらも、進む方向を定めるのは、私たち自身の科学的なまなざしでありたいと願っています。
開催地・熊本は、阿蘇の大地に育まれた豊かな地下水が、人々の暮らしを支える「水の国」です。目には見えなくとも、絶えず巡り、日常を根底から支える水の営みは、生命を支える自律神経の働きを思わせます。見えないものの働きを知り、その調和を考える――この地で自律神経学を語り合うことには、ひときわ深い意味があるように感じます。地域の暮らしを支える水の循環になぞらえれば、研究の成果もまた、診療へ、社会へと巡ってこそ、真の恵みになるのではないでしょうか。
「三人寄れば文殊の知恵」。AI時代であっても、異なる経験と専門性を持つ人々が集い、互いの問いに耳を傾ける価値は変わりません。むしろ、新しい技術が学問の境界を越える今こそ、基礎と臨床、若手と先達、さまざまな領域の対話が必要です。完成された成果だけでなく、まだ答えのない疑問も持ち寄っていただきたいと思います。画面の向こうでは生まれにくい、ふとした一言や思いがけない出会いが、次の研究の芽となることを期待しています。
80年の歩みを、末広がりの未来へ。伝統を礎に、新しい知と人のつながりが湧き出す総会となるよう、準備を進めてまいります。秋の熊本で、議論は熱く、交流は温かく、ひと息つく時間は穏やかに。皆様とともに自律神経学の次の一歩を踏み出せますことを楽しみに、多数のご参加を心よりお待ち申し上げます。
